書籍紹介
交通インフラ経営のグローバル競争戦略 ―国際競争力強化に向けた国家戦略の視座―
―『国の競争力』強化を目指す交通インフラの戦略的活用モデルとは?―
これが本書を通じた問題意識である。世界的にみると、民営化や規制緩和が進み、交通インフラ経営戦略は、ダイナミックに変化している。こうした中、先行的に事業拡大等を進める海外の交通分野の主要なグローバル企業体へのインタビューなどを通じて、交通インフラ経営のビジネスモデルや国際競争力強化に向けた国家戦略の基本視座をとりまとめたものである。本書の特徴は、鉄道のみならず、港湾、空港、道路といった交通インフラをモード横断的にとらえ、ライフサイクルやビジネスモデルを類型化し、共通的特質やネットワーク効果、企業体間の連携効果等に着目している点にある。
交通プロジェクトは、国力や産業力と密接に関連しており、その設計に当たっては、国策としての戦略と、民間企業にとっての魅力とのマッチングが求められる。この視点から、ネットワーク効果や連携メリットを活かしたグローバル財としての競争力強化のスキーム構築への期待を熱く語っている。
著者は、博士号を有する国土交通省の行政官であり、英ケンブリッジ大学への留学経験もある戦略分析の専門家である。本書は、筆者の個人的著作であるが、インドや中国、南米等各国の交通インフラ整備の政策の方向性や取組みも紹介しており、戦略理論と実務の両面から、インフラ展開と官民連携の取組みに大いに参考になるものと思われる。
鉄道分野に限らず、インフラ経営や海外展開に興味をお持ちの方なら、ぜひ目を通しておいていただきたい一冊である。
著者:中野 宏幸
発行:日本評論社
目次
- 第1章 グローバル・トレンド
- 第2章 グローバル企業体の戦略
- 第3章 インフラ経営戦略の進化特性――ライフサイクルの特徴
- 第4章 インフラ経営戦略の類型特性――ビジネスモデルの特徴
- 第5章 港湾と空港の国際力強化のネットワークモデル
- 第6章 コアコンピタンスと国際展開戦略
- 第7章 「競争と連携」の戦略
- 第8章 ビジネスモデルの改革戦略
- 第9章 プロジェクト・マネジメント戦略
- 第10章 世界の交通関係PPPプロジェクトの動向
- 第11章 英国におけるPPPと民営化のモデル
- 第12章 発展途上地域の成長戦略
- 第13章 わが国における今後のアプローチへの示唆
なお、組合員サイト「JORSAの本棚」にも追加致しました。